目の前のプロダクトだけじゃなく、組織のビジョンまでお客さまと一緒につくる。それが、メンバーズの伴走支援です。
新卒でメンバーズに入社後、人事の仕事を任された酒井さん。大学在学中からWeb業界でプロダクトを作ることを目指していたため、採用業務に忙しい中でもクリエイターになりたい気持ちは消えませんでした。転機は社内公募でUXデザイナーの募集を見つけたこと。人事畑からUXデザイナーへと転身した酒井さんの経歴と、今後目指す仕事への向き合い方について聞きました。
希望とは違った採用の仕事も、次第に面白さを感じるように。
大学では社会学部に所属し、ゼミではSNSやインターネットの出現による今後の社会の変遷について学んだり、実際にアプリやARのプロダクトを作っていました。
就職活動の際も、自然と興味はIT・Web系の企業へ向かいました。若いうちにたくさんの経験を積みたかったのでベンチャー企業を中心に情報収集をしていましたね。いろいろな企業がありましたが、その中でもメンバーズに興味を持ったのは、CSV(※1)という考え方に惹かれたからです。説明会では当時社長だった剣持さん(現在は代表取締役会長)が直接メンバーズのミッションやビジョンについて語っており、そこに共感して入社を決めました。
Webの技術を身に着けて、プロダクトやサービスをつくる仕事がしたいと思って入ったメンバーズでしたが、最初に配属されたのは人事の部署。正直なところあまり興味のない領域だったため、最初は戸惑いもありました。
入社半年後に、新卒採用の担当として仙台拠点に異動することに。仙台拠点では私以外に採用担当がおらず、採用目標も高かったので忙しく日々を過ごしました。ちょうどメンバーズが地方に拠点を拡大していくタイミングでもあり、その後も新しい拠点の開設に合わせて採用を強化するために北九州への転勤も。新卒採用チームのリーダーとして、地方のクリエイター採用に携わりました。
入社前にやりたかった仕事とは違った採用の業務ですが、しばらくすると自分が採用に関わった新卒たちが入社してくれるようになりました。彼らが活躍している姿を見るのはもちろんうれしいことでしたが、2年もすると新卒だった彼らが成長し、またさらに下の後輩たちの面倒を見ているんですよね。そんな成長した姿を見て、「この仕事ってすごく面白いな」と思うようになったんです。
念願のUXデザイナーに転身。スキルのなさに感じた危機感。
採用担当の仕事には4年くらい携わりました。仕事にも慣れ、採用の楽しさも分かってきたころでしたが、現場を経験したいという気持ちは消えていませんでした。そんな中、UXデザイナー職種の社内公募を見つけて応募。現場の部署への異動を認めてもらうことができました。
実際にUXデザインの部署に入ってみると、改めて先輩のクリエイターのスキルレベルの高さを実感しました。年齢も離れた人が多く、たくさんの経験を積まれてきたということが肌で感じられました。
だからこそ余計に、自分自身にスキルも経験もないことを痛感させられたんです。自分の居場所がない、という危機感を感じましたね。とにかく早く戦力になりたいという思いから、社会人向けの大学に通いUXデザインの基礎を学びました。ユーザビリティテストやUXデザインの一連のプロセスの実践、実際にプロダクト開発の現場でUXデザインに関わる方々が講師を務めてオムニバス的に講義を受けるなどといった学習内容でした。そのほかに自分で本を読んだり、学んだことを社内で教えるための勉強会をたくさん開いたりして自主学習も進めました。
業務面では、ほかのメンバーが苦手としていた経理処理などの事務的な作業を率先して引き受けるようにしていました。UXデザインの領域ではまだまだスキル不足だと自覚していたので、それ以外に自分のできることは何でもやろうと思ったんです。次第にチームメンバーから認めてもらえるようになり、信頼してもらえている、と感じられるようになりました。
実際の案件ではユーザーインタビューを実施して、ペルソナやジャーニーマップを作って、施策を考えるといったものが多かったです。経験豊富な先輩方に手伝ってもらいながら、悪いところを指摘してもらって直したり、ときには最初からやり直したり、そんな感じで経験を積ませてもらいました。
その一方で、最初は気乗りしていなかった採用業務の経験が、実は役に立ったとも感じているんです。
UXデザインの現場ではユーザーインタビューを実施します。面接で話すこととUXデザインにおけるユーザーインタビューは別物なので、すぐに慣れたとまでは言えませんが、これまで面接でたくさんの学生と話してきたので、その意味では感覚をつかみやすかったかもしれません。また、社内のさまざまな場所で自分が採用した社員が活躍していることが、ここで生きてきました。実地調査をする際に社内で協力を仰ぐことも多いのですが、誰かに依頼をする際も、最初から人間関係があることでスムーズに進められたと感じています。
過去を振り返ってみて思うことですが、特に若手のうちはキャリアに関係ない仕事などなくて、一見自分の希望に沿っていない仕事でもその経験は後から確実に生きてきます。私自身、今ではどんな仕事でも次の仕事に絶対生かしてやる、という気概を持って向き合うようにしていますね。
お客さまと一緒につくった組織のビジョンは、伴走支援の成果。
現在は自動車関連のIT企業の案件に携わっています。自動車に搭載するカーナビなどの機器にどういう機能があったらいいか、ユーザーにとって使いやすいものになっているかといったことを、UXデザインやUXリサーチの観点から支援しています。私自身はプレイングマネージャーとして、各プロジェクトの主担当のメンバーの相談を受けながら、プロジェクトを設計したりアドバイスをしています。お客さまの要望を聞きながら、プロジェクト全体の形をつくり、一つのプロジェクトをどう進めていくか考えるのも私の役割です。
この部署に入ったばかりの頃とは違い、現在は私が年長者。ほかのメンバーは若手です。若手といっても入社2、3年のまだまだこれからの子から、5~7年目の経験豊富な子までさまざま。みんな優秀で、ユーザーリサーチやユーザビリティテストが得意な子たちが多いですね。お客さまの要望を受けて、自分たちで考え、アイデアを出しながら仕事をしてくれるので心強く思っています。
チームビルディングのためにワークショップなども取り入れています。未来洞察と呼ばれる手法なのですが、あるテーマについてニュースを集め、今後の社会情勢について考える時間を設けています。例えば車やモビリティというテーマだとすると、世の中にはいろいろなニュースが出ていますよね。自動運転ができるようになったとか、新しい法規制についてなど。そういった事例を集めて、これから先の未来がどうなっていくのか洞察してみるといったワークです。普段の業務からは少し離れて、チームでこういったことを話し合うことでビジョンを共有し、協力し合える雰囲気を醸成できていると感じます。
チーム内だけでなく、お客さまと一緒になって、20年後30年後の未来を見据えて、企業としてどういうユーザー体験を提供するべきかというロードマップを考えたこともあります。クライアント企業のビジョンと、車やモビリティを取り巻く社会に関する未来予測、それからお客さまを中心としたUXグループの方々の思い、この3つを軸として、お客さまとチームのメンバーで一緒になってワークショップに取り組み、ロードマップを作成したんです。それをお客さまの上位の役職の方に見ていただく機会があったのですが、「すごくよくできているので、ぜひこれを指針にしたいね」と言っていただけました。
目の前のプロダクトをよくしていくことももちろん大事ですが、お客さまと一緒に組織全体のビジョンを作れたことがとても喜ばしいことだと思いますね。お客さまの一社員のように伴走支援するメンバーズならではの成果だなと感じます。
チャレンジしがいのある仕事を通じて、チームとして成長していきたい。
ユーザーや社会が本当に求めているものが何か、ちゃんと見つけ出して形にできるといいサービスになる、というのはUXデザインの世界で言われていることです。
しかし、自分が欲しいと具体的に言えるものって、もう世の中に出てしまっているんですよね。例えば、おなかがすいたけれど何か作るのは面倒くさい、となったらコンビニへ行ってお弁当を買いますよね?でも潜在的なニーズ、その人が自分でも気づいていないようなニーズをちゃんと見つけ出して形にできると「これってぜんぜん思いつかなかったけど、すごくおいしいし手軽に食べられるよね」といったような新しいプロダクトやサービスになると思います。
だからそういうものをちゃんと見つけ出してプロダクトとして形にしていきたいし、そのためにUXデザインが大事なんだと思っています。
今後の目標は、難しくて面白い仕事を通じて、一人ひとりが高いスキルと独自の個性を持つ、そんなチームをつくっていくことです。
メンバーズはCSV経営の浸透を目指しており、私自身そこに共感しています。だからこそより社会にとっていいものを作り、多くの人に影響を与えられるようになっていきたいです。そのためにはより難しい仕事や、一見するとどうやって実現するのかわからないようなスケールの大きな案件を担当して、デリバリーできるようなチームになっていかなければいけないと感じます。1人1人が高い専門性やスキルを発揮する一方で、UXデザインのスキルだけではなく、個性や人間性を育んでいくことも必要です。結局のところ、お客さまから一緒に仕事がしたいと思ってもらえるかどうかはその人の個性や人間性に左右されると思うんです。チームとして偏りなくさまざまな個性を発揮しながら、それぞれの強みや弱みを補い合って、世の中に影響を与えられるようなまったく新しいサービスやプロダクトを生み出していきたいです。
チャレンジしがいのある難しい仕事に挑戦していくことで、チームのスキルや個性を最大限に発揮しながら成長していきたいですね。
編集後記
インタビューの中で最も印象に残ったのが、メンバーの個性や強みをとても大切にしている酒井さんの考え方です。
対話をすることでメンバーの持ち味を引き出し、チームの力を最大化しているのだと感じました。
ひとを大切にし、ひとにベクトルが向いているからこそできるチームづくりです。
文/吉田 拓望
取材・写真/谷貝 玲