最終的な目標は、DXコンパスが必要ない社会をつくること。プロジェクトに関わる全ての人の成長に貢献することです。
『突拍子もないことを言うようですが、将来的にはDXコンパス自体が世の中に必要ない会社になるべきだと思っているんです』と話す奥村さん。お客様のプロジェクト成功に向けて、「本当に必要な支援」を行うカンパニーの事業内容やお客様との向き合い方、さらに奥村さん自身の仕事観についても伺いました。
「お客様と一緒に」プロジェクトを成功に導くのが、私たちの仕事。
ディーエックスコンパスカンパニー(以下、DXC)では、大手企業を中心にデジタルトランスフォーメーション(以下、DX)に関わる幅広い支援を行っています。現在はそのうち8割がPM、PMO領域。端的に言うと、DX実現を目指すお客様のリーダーに伴走し、プロジェクトを成功に導くご支援ですね。
例えば「既存サイトの売上を上げたい」という企業に対して、大枠の戦略を考えるのは経営者やコンサル会社。ですが、その戦略がそのまま現場リーダーのところに降りてきても現場は動けません。売上を上げるためにエンドユーザーとどう接点を取っていこうか?そのために必要なシステムは?…というように、実現したいゴールから逆算して道筋をつくり、それをプロジェクト化してお客様先に導入する、またはPMに寄り添ってプロジェクトをマネジメントするのが私たちの仕事です。
一口に「支援」と言っても企業によって考え方は異なり、競合の中には「PMの意思決定を支援するまでが役割(プロジェクトの主体はクライアント)」という会社も少なくありません。一方で、DXCが大切にしているのは「自分たちがプロジェクトの責任者である」という意識。お客様と定めたゴールを達成するまで、お客様と一緒に走りきるイメージですね。そもそも仕事というのは、誰かが困っていて、それをその人ができないから仕事になる訳です。常に目の前のお客様と向き合い、できることを尽くす。いわゆる「貢献志向」は、私自身がずっと大切にしてきた価値観でもあります。
過去の出会いから学んだ、「誰かのために仕事をする」大切さ。
貢献志向を強く持つようになったのには、過去の経験も影響しています。というのも、学校を卒業して最初に就職したのはホテル業界。仕事中、様々なお客様と接する中で、お客様と向き合う楽しさや難しさ、役に立てる喜びを日常的に味わう経験をしました。その時の学び、さらに当時の先輩方からの教えもあって、「貢献することはビジネスの根幹」「貢献できなきゃ仕事じゃない」という思いを自然に持つようになりましたね。
そこからメンバーズに入社し、今に至るわけですが、入社当時はWebどころか法人向けの仕事の経験も全くない状態。そんな自分にビジネスの基本をすべて教えてくれたのが、最初の上司でした。今は自分が教える立場になりましたが、この時育成してもらったことへの感謝が、「相手のために」という意識や「育てたい」という気持ちにつながっていると強く感じます。
相手のためにできることを尽くせば、解決できない課題はない。
メンバーズでも今の支えとなっている経験はたくさんありますが、中でも大きなものが2017年から担当した「課題案件の立て直しプロジェクト」、いわゆる炎上案件のマネジメントです。
炎上…というと聞こえは悪いのですが、つまりはありたいゴール実現に向けた方法が見えなくなっていたり、双方の認識が食い違っている状態にある案件のこと。「どう動けば良いかわからない」という状態から入っていくことになるので、立て直しまでのプロセスも非常に地道です。
ここで大切にしていたのも、やはり「お客様と向き合う」ことでした。まずは少しずつお客様に信頼していただくところから、こちらの提案に賛同してもらえる関係を築き、一つずつ成果を出して炎上を解消していく…。明確な答えがない中、しかも「自分がやらないと絶対解消できない」という状況で、自分で考え、行動する力はかなり鍛えられました。これらを乗り越えたからこそ、「どんなに困難な課題も、適切に行動できれば何らか救いの道は見えてくるもの」という自信も得られたように思います。
今はDXCとして約3年半。今まで出会ったどの課題も、乗り越えられないと思ったことはありません。当時に比べるとゴールまでのプロセスが明確ですし、プロジェクトマネジメントに関しては、参照できる文献もたくさん出ています。それに何より、「解決できる」という自信を持ってお客様と向き合えるのは、仕事を進めていく上で大きなプラスだと思っています。
カンパニーを率いる今も、お客様との対話を大切に。
お客様にはよく、「私たちはドラえもんの『ほんやくコンニャク』です」と説明しています。コンサル会社、経営層、現場…と役割の異なる人たちの間で、それぞれが言っていることを理解し、伝達し、物事を前に進めていくのがPM・PMOの仕事。いろんな視点を持った人たちの間に入る立場上、コミュニケーションには特に重点を置いています。
対話を重視するという意味では、プロジェクトを運営していく場面も同様です。エンジニア、ディレクター、デザイナーなどたくさんの人が一緒に動いていると、どうしてもお互いの役割を“お見合い”しがち。そんな時、「このタスクはこちら、このタスクはこちら…」ときちんと役割を振り分けていくこともPM・PMOの大切な仕事。ここでも、地道なコミュニケーションは欠かせません。
そうして調整を重ねた結果、一人ひとりが迷いながらではなく、きちんと前を向いてプロジェクトが回り始めた時の達成感は大きいですね。お客様が求めることにきちんと応えて支援を完了できる。そうした事例を今後も増やし、カンパニーとしての存在感を高めていきたいと思っています。
最終的な目標は、「DXコンパスが世の中に必要なくなること」。
今ではどの業界でもDXが当たり前に行われています。一方で、全体の成功率はまだまだ低いのが現状。プロジェクトの難易度が上がっている、長期化しているなど理由は色々ありますが、その中で成功率を上げるために必要だと思っているのが「プロジェクトマネジメントの内製化」。外部の力を借りず、自分たちでプロジェクトマネジメントできる企業を増やすことが、カンパニーとしての今後の目標です。
現在も、自分たちでマネジメントしたいと仰っていただける企業には、ご支援の際にノウハウを隠すことなくお伝えしています。メンバーズ社内でもPMOを広める動きが進んでいて、プロジェクトマネジメントの基礎を学ぶワークショップなども開催しているところ。まだまだ手探りではありますが、当面はカンパニーとして支援できる領域を広げながら、「自分たちでマネジメントできる」と言ってもらえる組織を増やしていきたいですね。最終的には、DXC自体が必要ない会社になって、別の事業にシフトしていくのが理想です。
この先も、プロジェクトは形を変えてずっと続きます。PM・PMOの役割がますます重要になるからこそ、今後入社される方には「貢献」への意識を特に大切にしてほしいですね。支援を続けた結果、プロジェクトに対処できる人が増えれば、その企業も成長していく。さらに社会課題の解決、国全体の成長にもつながっていく――社会に広く貢献できる仕事に興味のある方、難易度の高い課題に立ち向かっていける方なら、充分に手応えを感じられる環境だと思います。大きな目標に向け、全員の力で事業を発展させながら、共に成長していけることを楽しみにしています。
編集後記
ホテル業界での学び、上司との出会い、様々なプロジェクトで得た知見…。奥村さんの過去の経験すべてが今の「貢献志向」に、お客様を大切にする価値観に、さらにカンパニーの理念に結びついていると感じられたインタビューでした。貴重なお話をありがとうございました!
取材・文/増田 雅美