生成AIの先端事例として、自分の仕事がニュースに取り上げられた。あの感動は忘れられません。
「このままでは自分の仕事は淘汰されるかもしれない」そんな危機感を覚えて転職した河内さん。メンバーズに入社して生成AIの仕事に従事している今、どのような思いを抱いているのでしょうか。インタビューで伺いました。
“将来のキャリアまで描ける仕事”を探していた。
学生時代からずっとコンピューターを使う仕事をしたいと考えていて、就職活動では幅広くITビジネスを展開している企業に就職しました。ここでならシステムエンジニアとしてキャリアを積みながら、コンサルタントのキャリアも視野に入れられると考えたのです。
入社後はまずスマホのアプリやIoTデバイスの受け入れ試験から始め、キャリアを積み、最終的には試験チームのリーダーのポジションを任されました。ただリーダーといってもその役割は他社のSESの方々を管理するというものであり、「希望とするキャリアと少し違う」と当時感じていました。
本格的に転職を考えたのは、世界に生成AI公開のニュースが流れたことがきっかけです。当時2022年はまさにAI台頭の年であり、まず画像生成AIの『Stable Diffusion』がリリースされ、11月には『ChatGPT』がリリースされました。AIの影響力の大きさに「今後作業する人はどんどん必要なくなっていくだろう」と危機感を覚えたのです。「このままでは自分の仕事は淘汰される」と考えて転職することを決めました。
AI専門の組織でスターティングメンバーになれるチャンスが来た。
「機械学習やAIを使った仕事をしたい」と考えて求人を探していると、たまたまメンバーズの求人が目に飛び込んできました。そこに書かれていたのは「2022年7月にAI専門カンパニー『エーアイリーチカンパニー』を立ち上げたばかりで、スターティングメンバーを探している」というものでした。「組織の立ち上げに興味がある人がほしい」ということから、「ここならチャレンジングなことができる!」とワクワクしましたね。エンジニアでありながら組織の立ち上げにも関われるなんて、他社にはない経験ができると思いました。AIのリテラシーは求められていましたが、実務経験はなくても大丈夫、とのことだったので「ぜひ挑戦したい」と思いました。
生成AIの仕事では、AIへの理解と探求心が求められる。
入社後はまず大手メーカー企業のR&D系部署向けの画像生成や画像内物体検知プロジェクトに携わりました。その後、教育事業を展開する企業で生成AIを使ったWebサイト制作業務の改善も担当しています。このプロジェクトは先端事例として多くのプレスリリースにも取り上げられました。
現在はLCA(※1)算定ツールの発展系の開発相談を伺い、より業務に適した構築を行なっています。メンバーズでは脱炭素に積極的に取り組んでおり、今回開発したLCA算定ツールもどのくらい製品が二酸化炭素を出しているのかを算定するために使われます。他にも生成AIを用いた認識AIの向上プロジェクトにもチャレンジしているところです。
生成AIの仕事に必要なのは、AIへの理解と日々のキャッチアップ、そして探求心です。いかに自分の欲しい情報にアクセスできるかどうかも大事になります。実際にAIを使う仕事をしてみると「AIで何ができるのか」をある程度認識していることは非常に大切です。「こういうことができそうだから、こうしたらどうか」というようにパズルのピースを組み合わせていく感覚で仕事をしています。
また生成AI自体が歴史が浅いため、クライアント側もAIに関する知識が豊富ではありません。そのため、私たちの仕事は「AIによる道筋を説明する」という面もあるのです。そもそもお客様の要望をすべてAIで実現することは難しいこともあります。何をAIで実現して、何を人の手で行なうのか、常にすり合わせをし、調整していくことが大事になる仕事です。
ニュースに取り上げられた案件は今でも印象に残っている。
印象に残っているプロジェクトというと、やはり教育事業を展開する企業のWebサイト制作業務の改善プロジェクトですね。メンバーズの中でも“生成A Iを使ったプロジェクトの先駆け”ということで期待感が高く、かつスピード感が求められていました。エーアイリーチカンパニーからは3人がアサインされて、AIでなにができるかを道筋を立てていくところと、実際のシステムに起こす場合の作業者のリテラシーなどを鑑みた設計などを担当しました。
当時のエーアイリーチカンパニーのメンバーはWeb領域が未経験で、Webページ作成に関する経験がありませんでした。そのため「作る人が何に困っているのか」を想像することが難しい部分があったのです。そこで、クライアントのチームの方に相談して何度もヒアリングを実施したところ、いくつか課題を明らかにすることができました。
たとえばクライアントは紙媒体もWeb媒体も有していたのですが、基本的には「紙ありき」であり、紙のキャッチコピーや情報をいかにWeb画面に落とし込むかがキーになっていました。さらにスマホの画面に綺麗に映し出すことを考慮する必要があり、都度文章を変える手間がかかっていたのです。そこで「先に文章の流れをAIに教えて、文字数内で文章を生成する」という論文にも掲載されているプロンプトのフレームワークを採用したところ、AIでうまく処理できることが分かりました。
数々の課題を解決してWeb画面ができたときは、ひとまず胸をなでおろしましたね。リモートでしたがオンライン上で全員で喜び合ったことを覚えています。でも一番喜んだのはプロジェクトが終わった“後”です。自分達の仕事が会社のプレスリリースに出て、様々なメディアに取り上げられたときはとても感動しました。本当にうれしくて関係者全員にそのURLを送り、喜びを分かちあいましたね。そのとき初めて「世の中が注目するような先端事例に関わっているんだ」と実感しました。
AIエバンジェリストとして積極的に活動していきたい。
エーアイリーチカンパニーは組織として立ち上がったばかりなので、自分のやりたいことがやれる環境があります。やりたいことの一つに「AIラボ活動」があるのですが、希望を出して2ヵ月足らずで実現しました。いい意見ならすぐに採用されるスピードの速さがエーアイリーチカンパニーにはあります。
ラボ活動は社内の有志で集まって、AI活用に関する論文や本を読んで発表するという形でおこなっています。AIに興味を持っている社内のメンバーに、「今のAIってこういうことができるんだよ」という話をすることで、エーアイリーチカンパニーのみならずメンバーズ内でもAIを身近に感じてもらうことが目的です。
今後も、AIの利活用について解説し普及させる「AIエバンジェリスト」(※2)として、メンバーズでのAIリテラシー向上を目指し、AI利活用を促進していきたいです。積極的に活動を行なうことで、エーアイリーチカンパニーを盛り上げていけたらと思っています。
編集後記
AIの影響力の大きさに今後作業する人はどんどん必要なくなっていき、自分の仕事は淘汰されると危機感を覚え、機械学習やAIを使った仕事をしたいとメンバーズへやってきた河内さん。
AIエバンジェリストとして、AI利活用を促進していくことを目指していきたいという今後の目標を語ってくれました。
先進領域のためAIに関して理解している人が少ない中で、できるだけ身近なものに感じてもたいたいという想いをもって活動している様子がとても印象的でした。
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取材・文/須藤 亜希子
写真/谷貝 玲