データに基づく意思決定で効果的なマーケティングを実現。成果を出し続けることがカンパニーの存在意義です。
広告代理店での営業・営業企画の経験から、データをもとにした施策の重要性に気づいた市川さん。データアドベンチャーカンパニーでデータアナリストとして活躍した後、より多くのお客さまの役に立ちたいとの思いから、データを通したユーザー行動の理解とマーケティング施策を推進するグロースアナリティクスフォースカンパニーを設立しました。市川さんのこれまでの経歴やカンパニー立ち上げの経緯について聞きました。
-カンパニーの事業内容について教えてください。
Googleアナリティクス4プロパティ(以下GA4)とBigQuery活用に特化し、企業のサービスグロースと人材育成を支援しています。GA4のデータ計測・分析・KPI設定から、データを重視したマーケティング施策の企画・実行運用・効果検証までを一気通貫で、お客さまに伴走しながら支援します。もともと私は中途入社でメンバーズデータアドベンチャーカンパニーへ入社し、データアナリストをしていました。今年の7月に立ち上げ発起人の河村と二人でグロースアナリティクスカンパニーを設立しています。
-メンバーズへは中途で入社されたんですね。市川さんは営業からキャリアをスタートしたと伺いましたが。
大学卒業後入社した広告代理店では、営業と営業企画を計8年経験しました。その経験を経て、その後のキャリアを左右する大事な気づきを得ました。それは、自分自身が定量的に見て成果の出る企画だと思いお客さまへ提案したものでも、「上の人がなんとなくこっちがいいと言っているから」とか、「こっちのほうがデザインが好み」といった感覚的な判断で、ほかの企画が選ばれることがある、ということです。もちろん自分の提案内容やシナリオの至らなさは反省すべき箇所です。一方で、定量的な根拠がない形で意思決定をすることは、より成果が上がる可能性がある施策を排除しているのではないかと感じていました。
自分の案のほうが成果が出ると思っていても、エビデンスを提示できなければ独りよがりに過ぎないし、納得していただけません。その時感じた悔しさややりきれなさを経て、データは重要だと感じるようになりました。
その後、「データをもとに意思決定し、成果をあげる」ということがやりたくて、ECのマーケティングコンサルティング会社に転職しました。ECサイトのデータを分析して課題点を明らかにし、売上を上げるための解決策を出すという業務です。データはあくまで手段です。しかし、データがあるほうが成功確率は上がりますから、それを証明する仕事がしたかったんです。ここでは、データをもとに数値からボトルネックを明らかにし、施策案を作って実行し改善するという一気通貫した活動ができました。しかし、自身のキャリアを考えてさらにステップアップをしたいと転職を考えるようになりました。
-そこからメンバーズデータアドベンチャーカンパニーへ入社されました。入社の決め手はなんでしょうか?
そもそも、転職理由は個人的な思いによるもので、仕事そのものにはやりがいを感じていました。転職先に求めていたのは、クライアントのパフォーマンスを上げることそのものに注力できる業態であることでした。
データアドベンチャーカンパニーの仕事内容は私が求めているものにマッチしていましたし、かつデータという軸もあります。データをもとにお客さまの成果を出す、というやりたかった仕事ができると思いました。
自分自身のスキル・パフォーマンスがダイレクトに仕事の成果に反映されていくので、実際に働いてみてやりがいを感じましたね。
入社後、2つのプロジェクトに関わりました。一つ目がデータ基盤側の業務で、データを使う人が使いやすい状態にするためのクレンジングの仕事です。二つ目がECサイトの分析・改善で、グロースアナリティクスフォースカンパニーで取り組んでいるものに近い業務でした。
-カンパニー立ち上げの経緯について聞かせてください。
メンバーズにはカンパニー社長公募制度があり、かねてより応募を考えていました。より多くのお客さまと接し、より多くのお客さまのお役に立てるような仕事をしたいなという気持ちが背景にあったんです。応募を決意したのは2023年の1月です。ただ、出したプランが市場規模的に小さいものだったので、その時は手ごたえはなく、審査も通りませんでした。
少なからず落胆していたのですが、そこに同じ部署で働く河村さんから、「GA4を主軸においた事業プランでカンパニー社長公募に応募しようと思っている。壁打ち相手になってほしい」とお願いされました。私と河村さんは過去に同じチームの上司とメンバーだったこともあり、相談しやすかったのかもしれません。私が一度カンパニー社長公募に応募したことを知り、話をしてみたいと思ったようです。
当初私はただの壁打ち相手だったのですが、相談に乗っているうちに共同でカンパニーを設立しようという話になりました。というのも河村さんと私は得意領域がきれいに分かれており、一緒にタッグを組むことでそれぞれの強みを生かせるのではないかと気づいたんです。河村さんはGA4を含めた技術領域や人材育成などが強みです。一方で私は営業経験があることや、数値管理、営業企画上でのPL管理などが強みです。経営の仕事は数値管理やPL管理含めたものが重要になってきます。また、河村さんがまだプレーヤーとして業務に携わりたいという希望もありました。そのため、最終的に私がカンパニー社長として、河村さんと共同設立というかたちでカンパニー社長公募に応募することにしました。
応募した事業プランでは、データの分析だけでなく、マーケティングの施策実行部分まで責任を負うカンパニーにしようと決めました。それまで所属していたデータアドベンチャーカンパニーは、基本的にデータから示唆を出すところまでが責任範囲で、施策実行部分までは基本的には支援に入らないことが多いんです。それに対して私たちが立ち上げたグロースアナリティクスフォースカンパニーは、例えばUIUX改善だったらそのディレクション部分まで、広告運用だったらそのディレクション・代理店を動かすところまでを支援する事業として発案しました。
上場企業の多くはGA4を何らかの形で導入しており市場が大きいことがわかったため、その点を役員の方々から評価してもらえ、プレゼン自体は順調にいったという手ごたえがありました。無事に審査も通り、2024年7月にカンパニーを立ち上げました。
-今動いているプロジェクトはどんなものでしょうか。
案件は大きく3つあります。一つはGA4の計測の改善を行いながら広告の評価を行っていく学校関係のプロジェクトです。そのプロジェクトではコンバージョンのポイントが学校への入学ではなく資料請求やオープンキャンパスで止まっているといった課題がありました。本当は入学まで含めた広告の評価が必要なので、広告評価の最適化のためにデータの計測基盤の改善を行っています。
そのほか、広告運用の成果を分析して予算配分を最適化したり、WebサイトのUIUXを改善していくプロジェクト、プッシュ配信やメール配信などCRM回りのプロジェクトもあります。
CRM配信のプロジェクトでは、最初はお客さまから、データ分析より配信に力を入れてほしいとご依頼いただいていたんです。しかし、徐々にメンバーの活躍が認められ、お客さまのほうからGA4を使ってデータ分析してほしいとご要望いただけるようになりました。メンバーがお客さまからほめていただいている姿を見ると、誇らしい気持ちになりますね。カンパニー社長としての視点で見ると、自分たちのサービスのコンセプトは間違っていなかったと自信が湧いてきました。
-メンバー各自が実力を発揮することで評価いただいているんですね。メンバー間ではどのようにコミュニケーションをとっていますか。
今いるメンバーは、私以外の多くのメンバーはクリエイターとして業務しています。そのため、普段から顔を合わせることはありません。その代わり勉強会は頻繁に行っていますね。あとは月に1回のカンパニー会を開いていて、そのあと飲みに行くこともあります。頻度はそれほど高くないものの、集まったときには分け隔てなくコミュニケーションがとれていると思います。勉強会はデータ分析や施策の効果検証方法、BigQueryなどの技術的なものを開いていて、参加率は高いです。今は私や河村さんが主催することがほとんどですが、今後ほかのメンバーも自分が学んだことをシェアしてくれるようになったらいいなと思っています。
-最後に、今後カンパニーをどのように成長させていきたいですか。
まずはWebサイト・アプリケーションやその集客のための広告運用などいわゆるデジタルマーケティング領域で成果を出し続けられる基盤づくりをしていきたいです。マーケティングにおいて、良いアイデアから成果が生まれるという状態も重要ですが、一方で「成果を出し続ける」という意味では再現性という視点も重要だと考えています。デジタルマーケティング・Web運用組織の仕組みの部分をお客さまと一緒に考えて、成果を永続的に出し続けられるようにしていきたいですし、その際に「データ」というものが基点になると考えています。
また、お客さまの事業の成果を出すために貢献するということは、メンバー全員が目標にしています。デジタルマーケティングの組織において成果を出すということを分解していくと、組織マネジメントの部分とも重なります。成果を出せる状態は、お客さまのデータ活用・デジタルマーケティングを推進していける立場になることと同義。お客さまから言われたことをただそのままやるのではなく、メンバーそれぞれが主体的に考えて、お客さまのデータ活用やデジタルマーケティング自体を推進していく――そんなサービスのあり方が当たり前に根付いたカンパニーを目指したいです。
編集後記
インタビューで印象に残っているのが、カンパニーを共同で設立した河村さんとのエピソードです。市川さんも、河村さんも信頼し合っていて、お互いの強みを活かしてカンパニーを運営していく方針がこれまで取材したカンパニーとは違った特徴でした。
メンバー全員がそれぞれの強みを活かして自ら動き、お客さまの成果に貢献していく。そんなビジョンが市川さんの言葉の節々から伝わってきました。
文/吉田 拓望
取材・写真/谷貝 玲